2014-2015年シーズンあたり、ブリヂストンのミニバンカテゴリー展開が迷走している、という不安を感じました。ラインアップの豊富さは認めるところ。しかし、低燃費タイヤへの移行過程で過剰派生、結局性能差による差別化に窮する展開を招きました。
しかしながら、ミニバンの特徴を最大限考慮、優れたウェット性能、静粛性、乗り心地、そして耐久性を備えるなど、変遷を経て現在のラインアップを形成します。
ミニバンの全体フォローを実践するも‥
2016年「REGNO」ブランドのミニバン専用として従来品「REGNO GRV」から進化した「REGNO GRVⅡ」がプレミアムとして頂点へ位置付けられます。コンフォートスタンダードとして「ECOPIA EX20シリーズ」の「ECOPIA EX20RV」が定着、スポーツコンフォートとなる「Playz PXシリーズ」の「Playz PX-RV」も投入。この3つの展開でミニバンの全体フォローを実践します。
しかし2017年には「ECOPIA NH100シリーズ」の「ECOPIA NH100 RV」を追加。コンフォート上位として「ECOPIA EX20RV」と差別化を図るもまた複雑化の懸念が・・ 結局2020年におけるラインアップでようやく納得の流れが出来たかと。「REGNO GRVⅡ」「Playz PX-RVⅡ」「REGNO GR-Leggera」ということで‥
ここに至る複雑化した展開を理解するには、これまでの歴史を理解する必要があります。ということで、ブリヂストンにおけるミニバン専用タイヤの出現を辿りましょう。以下大分端折ったつもりながら多少だらだらと。
ブリヂストン初のミニバン専用タイヤ
ブリヂストン初のミニバン専用モデルは、1997年に DONUTS 技術を搭載した「B-RV」です。2000年には AQ DONUTS を採用した「B-RV AQ」を発売、基盤技術の採用で着実な進化を訴えます。
「Bシリーズ」は、「B’STYLEシリーズ」へ移行し基盤技術も AQ-DONUTS Ⅱ に進化します。2004年2月に発売された「B-style RV」は、ミニバン特有の偏摩耗の抑制を強く謳った製品です。
2006年4月に現行最大評価を得ている「REGNO GRVⅡ」の従来品「REGNO GRV」が登場。プレミアムブランド「REGNO」にラインアップされたことで、極上の静粛性とふらつきを低減し安定感のある走りを強調します。
前年2005年はトーヨーのミニバンシリーズ最高峰モデル「TRANPATH Lu」が発売となりました。また2007年にはヨコハマからワンランク上のミニバン専用として「DNA GRAND map」がやはり登場しています。
いずれも当時のトヨタ「アルファード」、日産「エルグランド」、ホンダ「エリシオン」などプレミアムミニバンをターゲットにしたもの。「REGNO GRV」も同様の捉え方で誕生しました。
2008年は「PLAYZ RV PRV-1」の発売です。「PLAYZ」ブランドの特徴である直進性の高さから運転が楽になるコンセプトを踏襲したミニバン専用です。ミニバンはそのスタイルから重心が高くふらつきやすいことで、直進性を高次元で求めることは難しい。よってミニバンへの採用には期待が高められました。
2011年に登場した「PLAYZ RV ECOPIA PRV-1」は、ブリヂストン初のミニバン低燃費タイヤです。「PLAYZ RV PRV-1」に「ECOPIA」を冠し低燃費タイヤ化、従来の基本性能を踏襲しながらも転がり抵抗の低減を図り、ラベリング制度は「A/c」を実現します。「ECOPIA EX10」の進化によるミニバン専用としてのポジションも兼ねています。
2012年には「PLAYZ RV ECOPIA PRV-1」に比較して、27%もの転がり抵抗低減を果たした「ECOPIA PRV」が発売。転がり抵抗係数は「AAA」もしくは「AA」となり、ミニバンでも最高グレーディングを実現します。
2014年は「ECOPIA EX10シリーズ」の後継となる「ECOPIA EX20シリーズ」が登場。シリーズにはミニバン専用が新たに加わり「ECOPIA EX20RV」として配置されました。実質「PLAYZ RV ECOPIA PRV-1」の後継、またラベリング制度は「A/b」に留まるも低燃費タイヤ第2世代の特徴を受け入れトータル性能向上へ拘ります。
2014年7月は「ECOPIA EX20シリーズ」の軽・コンパクトカー専用「ECOPIA EX20C」から派生した、軽カーハイト系専用低燃費タイヤ「ECOPIA EX20C TYPE H」が発売。これスタンダードではなくミニバンカテゴリーへ。そして2015年4月「REGNO GRVⅡ」が誕生します。
2016年は「Playz PXシリーズ」として「Playz PX-RV」を投入。「Playz」は一旦フェードアウトしたブランド名。「ECOPIA」ブランドを冠せず「Playz」に戻ったことは、低燃費タイヤ熟成の意味が大きいのでは。
紛らわしい・・
2008年の「PLAYZ RV PRV-1」、2011年の「PLAYZ RV ECOPIA PRV-1」、2012年の「ECOPIA PRV」あたりが非常に紛らわしい。この時期は低燃費タイヤ導入前後です。これらが従来品として2014-2015年あたりまで残っていたことがラインアップの複雑化を招いたのでは。
そして2017年、新たな投入の「ECOPIA NH100 RV」は、コンフォート上位として多彩なミニバンに対するフォローを強化します。セダン・クーぺ専用、軽・コンパクトカー専用、そしてミニバン専用の3製品をシリーズ化する動きが再度実現します。
しかしながら展開は難しい。ラインアップの豊富さは好感を得る反面、差別化に窮することも多いかな。製品の方向性、製品数のバランスを求めるなら3つ、最大でも4つあたりまでかと。
最新ラインアップは基本のミニバン性能に回帰、多様性をもった括りが復活。これカテゴリー全体に言えること。具体的にはこうまとまります。
プレミアム「REGNO GRVⅡ」をフラッグシップに配置。スポーツコンフォートは2020年登場の「Playz PX-RVⅡ」に委ねます。しかし軽カーハイト系「ECOPIA EX20C TYPE H」はフェードアウト‥ しかし「REGNO GR-Leggera」が役割を引き継ぎます。