日本国内で冬に履く専用タイヤと言えばスタッドレスタイヤが一般的。しかし、スノー、ウインター、冬、スパイク、スタッド、そしてオールシーズンなどの各タイヤも存在します。これらの違いは何よ? また走りに対する影響がどれほどなのか興味あるところです。このあたり噛み砕きザックリながら示してみようかと。
冬専用タイヤ、実は多彩
スタッドレス
定義するとこう。過酷な冬道でも滑りを抑え、安定した走行を実現します。柔らかいゴム等による性能特性はアイス路面、そして雪路でグリップ効果を発揮します。最近はドライ性能や低燃費、そしてライフ性能の向上が図られ、首都圏など非降雪地域でも装着が推奨されています。
スパイクタイヤの廃止以前から開発が進みます。廃止によってそれに代わる位置付けへ。冬専用化へ最大のレベルアップが進みます。最新は第6世代、いや第7世代まで到達、冬専用タイヤとしての認知は当然ながら第一でしょう。
スノー
スパイク(スタッド)以前の存在と理解。夏タイヤに比べトレッド面(接地面)の凹凸を際立たせ(ブロックを高く角ばるようにする)、雪道での抵抗が大きくなることで滑り難さを意識しました。
しかし、ゴムは基本的に夏用と同じ、その為に冬の低温路面では硬化し限界が低い。アイス路面はとても滑りやすく夏用よりはマシかな、程度です。従ってチェーンも備えておく必要があったかと。
スパイク(スタッド)
スパイク=スタッド(鋲)を指します。よって双方は同じと理解。スノータイヤがアイス路に弱いことから、対策としてトレッド面にスパイクを装填したもの。これがアイス路に食い込みグリップ効果を発揮します。国内では一部を除き1991年3月に販売中止になりました。なおスタッドレスは、スタッド(鋲)がレス(無い)を意味します。
紛らわしいけれど、鋲が無くなってベースのスノータイヤレベルへ退化したのがスタッドレスじゃありません。起点こそ同一ながらスパイク禁止を経て、鋲無しでアイス性能向上を実現。それに留まらず更なる冬性能の追及を目指したのがスタッドレスです。
オールシーズン
夏・冬用の性能を兼ね備えた全天候型であるオールウェザー、いやオールシーズンというのが一般的。特殊コンパウンドとトレッドパターンは季節を問わず多彩な路面コンディションに対応します。浅雪程度なら走行可能なのが主張点。年間を通して季節や路面を選ばない、履き替えなしで走行可能であり異なるカテゴリーに括られます。
1年中使える通年利用に価値を見出しつつも、冬シーズンの使用にも耐えられる性能搭載が最大のメリットになるかと。但し、そこには限界も‥ そうアイス路では相当厳しい。また雪であっても豪雪の厳しい環境なら同様と捉えるべきでしょう。メーカーもこの点は認めており日常的にある場合は無理だ、と判断すべきです。
M+S(マッド&スノー)
国内ではSUV/4×4等にM+S表示が見られ、形式的にはオフロードは勿論、雪道でも走れる性能を持った製品と言われます。従って特にオフロード用となるM/Tタイヤなら、溝が太く深いしゴツゴツしたブロック構成で排泥性に優れることから、雪道でも行けるのでは。
実際メーカーでは、浅雪での性能に配慮した、としています。但し、冬性能に特化した製品ではない為に、アイス路や雪路を走行する際は必要に応じてチェーン等の装着を求めています。一応エマージェンシーレベルで何とか走行可能と捉えるべき、厳しい雪道走行には向いていない。M.S、M&S、M/Sなどとも表示されます。
M+S表示は(MUD+SNOW:マッド&スノー)、MUDは泥やぬかるみ、SNOWは雪です。つまり泥や雪道も走行可能であることは触れた通り。全天候型のオールシーズンにも刻印、特に米国の新車装着用タイヤに多く使われています。
しかし、現状は浅雪でも無理では、とも思える製品さえM+S表示が。そこでM+S以上のスノー性能が求められるようになり、新たな規格として誕生したのが「スノーフレークマーク」です。
スノーフレークマーク(3PMSF)
1999年北米で新たな規格として誕生したのが「スノーフレークマーク」。「スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)」、「シビアサービスエンブレム」とも呼ばれます。
これが付いていれば高速道路の冬用タイヤ規制は原則通行可能。国内では主にオールシーズンに刻印されるのが多い。個々では浅雪程度ならドンドン行けるというものから、厳しいのではと思うものまでピンキリ。
正直冬性能はスタッドレスに比較すれば信頼度合いが低下。全てがスタッドレス同様の冬性能を発揮する訳ではありません。
ウインター(冬)
ウインター(冬)タイヤは、冬場の氷雪路でも安全に走行が出来るよう造られた冬専用の総称です。そして近年はスタッドレスを指すのが大方。しかし、海外では微妙に異なり、特に欧州ではスタッドレスとオールシーズンの中間性能を搭載するのがウインタータイヤ、とされるケースが見られます。
その指針は冬場の高速走行に比重を置いていること。アイス性能を落とし、ウェットとドライ、雪道を走る性能に特化しています。スタッドレスに次ぐ位置付けながら、国内での普及は正直難しそう。
冬専用と言えども適材適所で選択を
国内市場において、ウィンター(冬)タイヤは新たな捉え方に発展したと言っていいかと。総称から固定種別として一線が引かれ、そしてオールシーズンの隆盛、そこに既存スタッドレスが待ち受けます。3つまで拡大した製品対応について以下違いを明確化したい。
3つの違いを一言で言えば冬性能です。スタッドレスは厳しい降雪時やアイス路での対応に最大の得意性を発揮します。近年はドライ、ウェット、更には低燃費も飛躍的な向上を果たしている、というのが一般的な主張になるかと。一方そこは冬に特化した製品ですから、やはりドライ、ウェットではウィンタータイヤ、そしてオールシーズンには劣ります。
ウィンタータイヤはそこそこの降雪時なら走破性に大きな問題を感じない。しかし、更なる積雪量の多さ(深い轍等が出来るなど)やアイス路では、特性がレベルダウンすることをメーカー自身が示しています。ドライ、ウェットは夏タイヤには及ばないまでもスタッドレスよりは優れます。
そしてオールシーズン。特性は夏・冬用の性能を兼ね備えた全天候型。特に新たな投入は冬性能にレベルアップを施しています。冬場におけるドライ、ウェットもウィンタータイヤ同様レベル。しかし、ここでの最大主張は夏場でも走行可能なことです。
3つの特性を示すといずれも微妙に異なる、という捉え方が出来なくもない。ウィンタータイヤは飽くまでもスタッドレスに次ぐ冬専用なので夏場の使用は避けたい。対してオールシーズンは通年を通して対応可能です。
しかしながら、実走行では特に冬性能に明確な差があり異なる製品主張に頷けます。冬性能と一口に言ってもその時々で状況は異なり、積雪量の多さやアイス路というヘビー環境での対応性、ここに大きな違いが見えて来るかと。それが以下に示す冬性能をメインにした序列です。
①スタッドレス
↑
②ウインター
↑
③オールシーズン
3つの更なる差別化
ウインタータイヤとオールシーズンはパターンの役割が似通っています。また双方でM+Sとスノーフレークマークが刻印されるなど冬性能要件を満たす指針をクリア。従って2つが表面上でも接近していると受け止められそうなのが厄介なところです。
ただ厳密化すればコンパウンドの素材違いが意外に大きく、それに長けたウインタータイヤが冬性能で上回ります。そしてこれは主に欧州で普及が進む製品です。
国内とは道路環境が異なるためにこのレベル、要は積雪量の多さやアイス路などの過酷な環境ではない、という事情から誕生したもの。オールシーズンでは役不足、と言ってスタッドレスのドライ、ウェット性能では不満。その中間性能を搭載する、と定義されるのはこれが所以かと。
実は各々、国や地域事情の性能要求を満たすことから誕生したはず。それがいつしか地球規模で天候変動等もあり要求レベルの変化、そうユーザーニーズに変革が見られます。メーカーとしては注視するところ。
結果、オールシーズンに続き海外メジャーの国内展開に変化(積極性)が。ピレリをはじめミシュランなど徐々にラインアップの存在を強調。従来のスタッドレス一強に対して、それぞれが更なる差別化を詳細化し新たな可能性を主張し始めました。