スタッドレスタイヤの歴史は、1991年3月にスパイクが販売中止になってから本格化します。しかし、既にそれ以前の1980年代には国内市場に登場しています。各メーカーとも最新は第7世代、いや第8世代にも到達。世代進化は性能進化でもありその過程ではブランド変更も行われて来ました。一方で従来に拘るメーカーもあり捉え方は様々です。
これまで世代によって性能追求、主張点は強化されて来ました。そして第5世代で多くが集大成を謳うも、最新世代は更なる進化を実現しています。ここに至る経緯、歴史を確認してみます。(随時更新していきます)
スタッドレスタイヤこの年にこの製品登場!
ブリヂストン BLIZZAK の歴史
ブリヂストンのスタッドレスタイヤブランド「BLIZZAK」は、1988に登場したした「PM10」「PM20」、1992年の「PM30」あたりが始まりになるかと。2013年シーズンで25年を迎え、この時登場したのが「VRX」です。集大成を謳い最上のアイス性能に高い自信を示しました。
進化は止まらない。最大となった「VRX」を超える「VRX2」の登場、更には「VRX3」によって新たな歴史が刻まれます。
1970年後半から1980年初頭は、スパイクタイヤ全盛による粉塵公害が社会問題化した時期です。これがタイヤメーカのスタッドレス研究開発に拍車を掛けました。しかしながら課題は多く、スパイクピンを使用しないで如何にアイス性能を向上させるか、難題だったでしょう。
発砲ゴムの誕生
見出したのはゴムの中に極小の泡を取り込み、スポンジのような柔らかさを持った素材です。アイス路面でグリップ力を得る手法の一つとして、トレッド表面に微細な凹凸をもったゴムが開発されました。
アイス路面で滑りの原因となるのは、タイヤとの間に発生する水膜です。この水膜を取り除くことで、アイスグリップを向上させることになります。これが発砲ゴムの誕生です。
そしてミラーバーンの対応にはとことん氷の研究を実施し、誕生したのが1994年の「MZ-01」です。1997年には気泡に水路を加えた連鎖発砲ゴムを採用した「MZ-02」、更にはその水路を大径補強したメガ発砲ゴムへと進化した「MZ-03」が2000年に登場します。水膜を効率的に排除する拘りの製品です。
ここから更に向上を果たす為に、発砲ゴムにプラスして氷を引っ掻く技術を実現しています。それがバイト粒子です。2003年の「REVO1」で採用、2006年にはレボ発泡ゴムZ採用の「REVO2」を投入します。
素材技術の進化と伴にトレッドパターンも同時に進化します。トレッド幅を広げ溝幅を小さくし、接触面積を増やしているのです。2009年登場の「REVO GZ」は左右非対象パターンを採用、縦の動きに対する対応が飛躍的に向上しています。
そして2013年に「VRX」を投入。集大成と呼ばれる所以はこれまで培ってきた技術の積み重ねです。アイス路面を制するタイヤが最上、と評されるのは至極当然のことです。
これさえも上回るのが「VRX2」です。集大成を超えると何と呼べばいい? いずれにしても「VRX」からアイス性能10%の向上です。その他諸々大きな進化を遂げています。最新は「VRX3」になっています。培ったアイス性能、その実力は20%の向上を果たし最高レベルに到達しました。
SUV/4×4もBLIZZAKへ
SUV/4×4としての露出、「BLIZZAK」シリーズとして登場したが「DM-Z3」からでは。2002年だったかと。1994年に投入された乗用車用「MZ-01」がベース、水膜を除水する発砲ゴムが初めて採用された製品でした。
ただ「BLIZZAK」以前としてなら「WINTER DUELER DM-01」、「WINTER DUELER DM-Z2」が従来品になるかと。
「BLIZZAK」シリーズのSUV/4×4としてメジャー化したのは2008年投入の「DM-V1」になる。 乗用車用「REVO2」で採用されたレボ発泡ゴムZを採用、「DM-Z3」に対し特にアイスブレーキ性能の向上が強く謳われました。
続く「DM-V2」は2014年発売です。「VRX」のアクティブ発泡ゴムを採用し高度なアイス性能向上を実現します。
そして「DM-V3」へ到達します。実質5シーズン目でのチェンジ、乗用車用「VRX2」で採用するアクティブ発泡ゴム2が搭載されています。「BLIZZAK」シリーズにおける信頼を更に強固なものにした基幹技術です。
BLIZZAKの由来
英語で大吹雪を意味するBlizzard(ブリザード)と、独語でのこぎりなどのギザギザの歯を意味するZacke(ツァッケ)を組み合わせBLIZZAKと名付けたという。1988年に発泡ゴムを採用した乗用車用スタッドレスタイヤの発売がきっかけです。2023年シーズンで35年を迎えました。
ヨコハマ iceGUARD は第7世代
ヨコハマは起点となる「GUARDEX」を1985年に投入、これが第1世代です。当時はスタッドレススノーラジアルタイヤ、という時代の流れを感じさる言葉で紹介されており何とも言えない味わいさです。
第2世代は1993年「GUARDEX K2」、「GUARDEX PROFUSE」発売、「GUARDEX ハイブリッド400i」新サイズ発売。このあたりは少し曖昧かもしれません・・
1997年7月「GUARDEX K2 F700」を投入、前年に北海道限定で発売しものを全国展開へ。ヨコハマのタイヤ哲学だというKissの氷上摩擦シミュレーションにより、エッジ効果と粘着摩擦力を謳います。1997年9月はロープロファイル専用パターン「GUARDEX K2 F700A」追加。
1999年7月「GUARDEX K2 F720」が登場。吸水バルーンを配合した 氷着バルーンゴム をコンパウンドに採用。ロープロファイルサイズ「GUARDEX K2 F720」も9月に追加されました。
第3世代iceGUARDシリーズの誕生
2002年「iceGUARD」シリーズの誕生が第3世代、その第一弾が「iceGUARD ig10」です。従来2倍の吸水力で氷上性能を大幅に高めたダブル吸水ゴムを採用しました。
2005年には「iceGUARD BLACK(ig20)」です。ブラック吸水ゴム を採用し、路面温度による路面状況の違いに対応することをアピールします。
そして第4世代は 2008年の「iceGUARDトリプル」、更に第5世代は2012年の「iceGUARD 5」、第5.5世代は2015年「iceGUARD 5 PLUS」と続きます。「iceGUARD 6」で第6世代に到達します。
2021年に最新第7世代の投入になります。「iceGUARD 7」がそれ。「iceGUARD」シリーズが追及する氷に効くを一層向上、雪に効もレベルアップ、永く効くも兼ね備え、一貫した追及姿勢を強調します。
SUV/4×4の変遷
1997年に登場した乗用車用「GUARDEX K2 F700」の技術を採用した「GEOLANDAR I/T G071」が1998年に発売されます。当初は北海道限定でアイス性能を高めたモデルとして登場、翌年全国展開へ発展させました。クロスカントリー4×4用スタッドレスとして紹介されています。
2001年「GEOLANDAR I/T+ G071」発売。従来の「GEOLANDAR I/T G071」のトレッドパターンを継承、コンパウンドには乗用車用「GUARDEX K2」シリーズの 氷着バルーンゴム を専用化し搭載したのが特徴です。
2003年「GEOLANDAR I/T G072」が登場。乗用車用スタッドレスiceGUARDのダブル吸水ゴムをアレンジし採用しています。そして2009年「GEOLANDAR I/T-S G073」へ続きます。
ここまでヨコハマのSUV/4×4ブランドは「GEOLANDAR」シリーズに拘ります。地球上のあらゆる道や大地を自在に走るというコンセプトの下に開発、スタッドレスタイヤも踏襲します。ブランド名に続く「I/T」はアイス・テレーンを意味。
そして2016年、SUVとして初めて乗用車用スタッドレスブランド「iceGUARD」を採用した「iceGUARD SUV G075」が登場。SUVブランド「GEOLANDAR」とは決別し、ヨコハマのスタッドレスは「iceGUARD」を全面的に強調します。
ダンロップ ミウラ折りサイプで躍進
1982年にスノーラジアルという括りで発売したのが「SP SNOWROYAL-G」です。1985年には「WINTER GUARD」へ、1989年には「GRASPIC S100Z」が登場。
1995年に投入された「GRASPIC HS-1」からがダンロップスタッドレスの歴史と言えるのでは。
1997年「GRASPIC HS-3」を経て、1999年に路面環境シミュレーション技術デジタイヤをスタッドレスに採用した「GRASPIC DS-1」が登場。2002年にはデジタイヤDRSⅡ技術に進化した「GRASPIC DS-2」を発売します。
更なる世代進化が進み、ブロック剛性を向上し倒れこみの抑制を図るミウラ折りサイプの登場です。ミウラ折りとは、三浦公亮氏(東京大学名誉教授)が考案した地図の折り方だという。潰れることで強度を増す折り方としても知られています。
これを流用したミウラ折りサイプは非常に複雑な立体構造です。内部まで折れ曲がったサイプであり、ブレーキによりブロックに力が掛かっても隣あうブロック同士が支え合い倒れこみを最小限に抑えます。接地面積が増大し、ナノフィットゴムが持つ撥水効果を最大限引き出すことが可能です。
採用されたのは2005年発売の「DSX」。2008年の「DSX-2」で進化し、2012年の「WINTER MAXX」(2016年「WINTER MAXX 01」に名称変更)は、サイプ幅を25%細くした新ミウラ折りサイプを採用。シャープになったサイプ幅がブロックの倒れ込みを抑制します。
そして2016年、「WINTER MAXX 02」は製品主張こそミウラ折りサイプに触れていないものの、これまで積み重ねられた技術の結晶であることは間違いない。新開発のMAXXグリップパターンとしてブロック強化を果たします。その結果アイスブレーキ性能で12%もの向上を謳います。2017年CUVサイズを追加。
2020年、氷に超速で効くダンロップ史上最高の氷上性能を謳う「WINTER MAXX 03」投入。ズバリ、アイス性能の更なる向上を強調した氷上性能特化型プレミアム製品です。